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変形性膝関節症を自分で何とかする方法

全国に約2500万人の患者がいるとされている変形性膝関節症ですが、多くは40代後半から発症するケースが多く見受けられます。ですが「変形性膝関節症は中高年特有の関節疾患」と判断をするのは要注意です。

1.変形性膝関節症の基本を学ぼう

変形性膝関節症とは膝関節内の組織が変形して起こる疼痛現象です。昔はレントゲン検査の後に「骨と骨の間にある半月板(軟骨)が擦り減って薄くなっている」と診断を受けた方が多かったですが、今は「骨表面の関節軟骨が擦り減っている」という診断が基本となった様です。

ちなみに「半月板の損傷」はスポーツ外傷として非常に多く診断されています。

変形性膝関節症の症状について

初期

  • 時々、膝に痛みが走る。
  • 膝に捻りが加わると痛みが走る時がある
  • 膝の皿周辺がプニプニしている
  • 膝の皿周辺がズキズキ痛む

中期

  • 膝が最後まで曲がらない、正座ができない
  • 膝を伸ばしきる瞬間に痛みがピリッと走る
  • 膝に体重が掛かると痛みが走り、支えられない
  • 綺麗な二足歩行ができない。杖が欲しくなる。

末期

  • 何もしていない時でもズキズキ痛む
  • 少しでも体重が膝に乗ると電気が走る様な痛み

変形性膝関節症の特徴について

  • 男女比は1:4
  • 全国に2500万人の患者
  • 高齢者に多い関節疾患
  • 主な症状は動作時における膝関節の痛み
    • 初期:動作時に痛みを感じる
    • 中期:正座が困難、階段の上り下りも困難
    • 末期:安静時にも痛みが走る。膝が痛みで伸び切らない

変形性膝関節症の原因について

  • 加齢・老化
  • 膝関節への長年の蓄積された負担
  • 体重による膝関節への大きな負担
  • 歪んだ姿勢による膝関節への偏った負担
    • 股関節への負担を膝で庇っているケースが非常に多い

変形性膝関節症の膝で起こっている事

  • 半月板の摩耗(今は言われなくなった)
  • 関節軟骨の摩耗(今はこっちが主流)
  • 滑液の循環異常(膝に水が溜まる)
    • 分泌が多すぎるのか、吸収が停滞している
    • 分泌異常は関節内の炎症が原因

基本的には膝関節内で炎症反応が起き、その炎症に対して「滑液」が分泌されて水が溜まる形になっています。つまり「膝関節内の炎症反応」を収めない限りは水を幾ら抜いても「膝に水が溜まり続ける」という事です。

良く「注射で水を抜いてもまた溜まる」と嘆く患者様がいますが、あれは「関節内の炎症がそのまま」となっている為です。滑液の蛇口が開きっぱなしで水を汲みだしているだけだから止まらないのです。

 

2.変形性膝関節症への対処法は

変形性膝関節症を引き起こす根本原因は「炎症反応」となります。それが滑液の蛇口です。その蛇口を閉めない限りは永遠に水は溜まり続けますし、膝関節内の圧力は高まったままなので痛みは抜けません。

変形性膝関節症で向き合うべきは「いかにして炎症反応を抑えるか」だと覚えておきましょう。それが最初で最後のポイントとなります。

何故、膝関節で炎症が起こるのか?

膝関節内における「滑液分泌の亢進」を引き起こしているのは「炎症反応」です。ではその炎症反応はどうして起こっているのか?そもそも炎症反応とは組織が傷ついた事で起こる「治癒反応」の一つです。

そこで問題になる「膝関節の炎症とはどういう仕組みになっているのか?」が重要となってきます。

  • 滑液にむき出しとなっている関節軟骨が傷ついた
  • 傷ついて剥がれ落ちた関節軟骨の破片(関節ネズミ)が滑膜に刺さっている
  • 関節ネズミ以外の何かの理由で滑膜が傷ついた
  • 何かしらの理由で膝関節内に雑菌が入り込み繁殖している
  • 滑液を回収するリンパ管が詰まって循環不良を起こしている

膝関節内で炎症を起こす理由は色々あります。最も一般的に見られるのは「関節軟骨の破片」によって滑膜がチクチクと刺激をされて滑液分泌が亢進されるケースです。これは正に変形性膝関節症の代表的なパターンです。

雑菌繁殖は注射の後の傷口が入り口となるケースが多いです。リンパ管のつまりによる循環障害は「下肢静脈瘤」等の治療でリンパ管や静脈を切った人に多くみられます。中にはガンなどの大きな病気の執刀の際にリンパ節を切除した場合にも見られます。

本来、変形性膝関節症とは「クッションである関節軟骨の消耗によって骨と骨が直接接触する事による炎症反応」が原因とされていますが、実際の臨床では膝に水が溜まっているだけでも「変形性膝関節症」という診断が出る事も多い様です。ですので診断名については余り気にしなくて良いと思います。

とにかく「炎症が起こっている原因」を真っ先に明らかにしましょう。

それぞれの炎症対策について

滑液にむき出しとなっている関節軟骨が傷ついた場合

傷ついて剥がれ落ちた関節軟骨の破片(関節ネズミ)が滑膜に刺さっている場合

これは一般的な変形性膝関節症のケースです。この場合の適切な対処法は膝関節の強化と安定化に尽きます。

  • 1.重心バランス、姿勢のバランスを取って左右の膝関節への負荷を均等に戻す
  • 2.膝関節を包む筋肉を強化して膝関節のサポーターを作り上げる
  • 3.体重を落として膝関節にかかる重力の負担を小さくする

骨そのものが激しい変形をしていない限りはこの3段階の取り組みで痛みや制限はかなり取り除けます。院の臨床で見る限りは「中々治らない」と悩む患者さんの殆どが「ヒアルロン酸注射」の通院と多少のリハビリ運動のみの取り組みとなっています。

残念ながら、その取り組みでは中々改善はしないでしょう。ヒアルロン酸注射は1ヵ月で効果が出たという人もいれば、1年単位で続けてやっと効果が出たという人もいるくらい個人差が激しいです。そしてその個人差が生まれる理由は未だに良くわかっていません。

その様な「一か八か」な方法だけに頼るのではなく、確実かつ短期的に効果が出るケースが多い「基本の取り組み」から始める事をおススメします。時間と予算に余裕があるなら同時進行でも構いません。できる事は全て取り組んだ方が気持ちも楽になると思います。

関節ネズミ以外の何かの理由で滑膜が傷ついた場合

このケースは「関節リウマチ」等の自己免疫系疾患で良くみられます。関節リウマチ自体は未だに原因が明らかにされておらず、その発生機序が不明です。

免疫細胞が自分自身を「排除すべき侵入者」と認識してしまい、自分で自分を傷つけてしまう事で関節が傷ついていきます。この場合はステロイドなどの抗炎症薬での抑制が一般的です。

関節リウマチによる炎症の場合は「炎症反応の発生そのものを抑える対処療法」が現状での治療法となります。

あと「痛風」等による関節内の炎症反応もあります。

何かしらの理由で膝関節内に雑菌が入り込み繁殖している場合

膝関節内に細菌が入り込む事で炎症反応が起こっている場合もあります。これは変形性膝関節症の治療で「ヒアルロン酸注射」がありますが、その傷口が感染のきっかけとなっているケースが多いです。

この場合の膝関節内の炎症は「明確な侵入者」が存在しており、その排除という目的に沿った炎症反応ですから傷口の消毒、抗菌薬の使用などで対処します。

滑液を回収するリンパ管が詰まって循環不良を起こしている

これは炎症反応というより単純な循環不良が生じているケースです。本来滑液は分泌されると同時にリンパ管などから回収される事で膝関節内での「一定量」を維持しています。それが下肢静脈瘤やリンパ節の除去などの影響で十分な量の回収ができず、分泌量に対して回収量が少なくなり「膝に水が溜まる」という現象が起こるのです。

また「回収量は正常だが分泌量が過剰」となる事で起こる膝の水もあります。膝の水が溜まるという現象においても複数の可能性が考えられるという事です。

分泌量の亢進であれば膝関節内に炎症が起こっている可能性が高いですが、回収量の低下の場合は循環機能不全ですので炎症性ではありません。ただし、滑液の循環が機能しなければそれ自体が炎症の原因となる可能性もあります。

分泌量の更新の場合は炎症の可能性を探り、回収量の減少が原因でその理由が「手術」等によるものであればリンパマッサージや加圧ストッキング等を使って下肢から膝にかけての体液循環を促進してあげる事が大切になります。

3.変形性膝関節症の予防法は

変形性膝関節症の予防法とは非常にシンプルです。これは変形性膝関節症にも繋がります。

  • 1.適切な体重を維持して膝関節への負担を抑える
  • 2.適切な姿勢、身体のバランスを整える事で左右均等の負担分散を心掛ける
  • 3.膝周りの筋肉をしっかり使い、筋肉のサポーターを作る
  • 4.ウォーキングなどの運動を生活に入れて常に血液の循環を促進する

基本的に関節疾患への対処とはどの部位に関しても共通です。上記4つを生活に組み込む事で多くの変形性膝関節症の患者様が元気な日常を取り戻してます。答えは案外身近なところに隠れているものなのです。

関節疾患の予防は「生活」にあると覚えておこう

今はTVや雑誌でも「変形性膝関節症を改善する体操」の情報が沢山紹介されています。ですが、最も効果的で地固めができるのは「ほんの少しの生活改善」だと覚えておいてください。体操も効果的ですが段々としなくなるのが人間です。

それよりも小さな変化で構いませんので「生活にほんの少しの変化」を投げ込みましょう。

  • ちょっとした用事は歩く
  • 起床前には軽く屈伸
  • 就寝前には寝ながら自転車漕ぎ

こんな小さな変化であっても「毎日」の生活に溶け込ませれば徐々に身体は変化を起こします。

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